情報を可視化して業務効率化!建築業界の3つの課題とAI活用事例4選

東京オリンピックや都市再開発などの影響で、少し前まで「建設バブル」とまでいわれるほどの好況だった建設業界。

しかし現在は、コロナ禍の煽りを受け、その影響は多かれ少なかれ建設業界にも及んでいます。

今回の記事では、現在の建築業界の3つの課題と、建築業界でのAI活用事例を4つ紹介します。

建築業界の3つの課題

人手不足

建築業界では機械ではなく人の力でしかこなせない業務が多く、慢性的な人材不足に悩まされています。コロナ禍の影響で建築バブルは一時的に落ち着きを見せましたが、今後もさまざまな大規模イベントや事業計画が進む傾向にあり、建築需要は高まることが予想されます。

長時間労働で変則的な業務時間になりやすいことや、労働の割に給与が低いことなども建築業界から人手が離れる原因になっています。

属人化が起こりやすい

建設業はノウハウをテンプレート化して効率向上を目指すことが難しく、システムに頼りにくいという特徴があります。

業務自体に専門的な技術を求められたり高度な内容であったりすると、必然的に特定の人しかその業務ができず属人化が起こります。また、業務の難易度自体は高くなくても、業務のノウハウを共有するためのシステムが不十分である場合も属人化につながります。

業務の属人化が進むと社内で情報共有が滞る可能性があり、属人化している業務がボトルネックとなり様々な業務が進まなくなる恐れがあります。

デジタル化が遅れている

建築業界というと現場での仕事をイメージしやすいですが、実際には受発注業務や設計・施工管理など、オフィスワーク関係者も活躍しています。しかし、「システム任せではなく人の手で作業しなければならない」という特性が業界で習慣化しており、打ち合わせや業務連絡、その他書類や図面の管理などもアナログな手法が取られることが多いです。

ITの活用によるコミュニケーションの効率化や、事務作業や図面管理、施工管理のデジタル化を進めることで業務効率化に繋がります。

建築業界でのAI活用事例4選

建設現場での意思決定支援

 画像:日経 xTECH記事から引用

竹中工務店では、単純作業を高速化し、浮いた工数を創造的な業務に当ててワークライフバランスをも改善するための3つのAIとして、「リサーチAI」「構造計画AI」「部材設計AI」を開発しています。

  • リサーチAI:社内に蓄積してきた膨大な設計データを整理してデータベース化し、この中から進行中の案件と似た事例を簡単に引き出せるようにしたAI
  • 構造計画AI:構造計算なしで仮定断面を自動推定するAI
  • 部材設計AI:詳細設計の際に部材の「グルーピング」を支援するAI

建設現場の段階に応じたAIを開発、活用することで作業効率化に繋がります。

品質・安全管理AI

画像:Autodesk公式サイトから引用

あらゆる状況に臨機応変に対応する必要がある施工管理業務では、工事の進捗状況や現場でのリスクなどを管理するためにAIを活用しています。

AIを活用したシステム開発を行なっているAutodeskでは、「Construction IQ(コンストラクション・アイキュー)」と呼ばれるAIを海外で試験的に導入しています。Construction IQにより、毎日の業務の優先順位や個々のプロジェクトの進捗などを可視化することができ、リスクを事前に予測して回避することができます。

図面の読み取りシステム

画像:公式サイトキャプチャ

建設を行うためには、着工前に必要な建材の数量や設備の性能を見積もる必要があります。従来の方法では、技術者が紙の図面を見ながら部屋面積などを割り出していましたが、この面倒な作業をAIに任せ、積算も自動化することで別の仕事に多くの時間を割けるようになります。

図面や工事写真を一元管理するクラウドサービスを提供しているPhotoructionでは、図面から線や文字などの情報を自動で読み取る「aoz cloud(アオズクラウド)」というAIを開発しています。

建物管理システム

画像:Japan News Centerより引用

最後は建物が完成した後の管理についてのAIです。

通常の建物は、空調や照明の調整や設備機器の異常把握などの運用管理の多くをベテラン管理者の経験に頼って行なっています。そこで、この建物の管理・運用の部分をAIに行なってもらうことで運転条件を自動的に最適化し、省エネルギーや省人化を実現することができます。

まとめ

ITやAIの活用が遅れている建築業界。

人にしかできない作業ももちろんたくさんありますが、単純作業を効率化したり、施工管理や安全管理などを可視化して情報共有しやすいように整えることで、今まで以上に人にしかできない業務に集中できるのではないでしょうか?

▼AI導入のステップについてはこちらの記事を参考にしてください。

急がば回れ!AIプロジェクトを成功へ導く5つのステップ

確実に効果のあるAI導入をするためには、まずはAIについて正しく理解することが重要です。AIが得意とする作業を知ることから始めましょう!