遅れを取り戻せるか!?日本の「DX」における課題と逆転の3つのポイント

AI後進国と言われ、特に中小企業で遅れが目立つDX。

東京大学大学院教授でAI研究の第一人者である松尾 豊氏の講演「もはや傍観者でいられない、加速するAI活用」から、日本のDXの現状と課題や、現状から逆転するために重要な3つのポイントなどについて抜粋してまとめました。

本記事で引用した資料の一部はソフトインフラレポート~DXの本質と産業変革に向けた提言~ | 調査研究レポート | 日本政策投資銀行(DBJ)として公開されています。こちらも合わせてご確認ください。

日本におけるDXの現状と課題

NVIDIA AI DAYS 2022「もはや傍観者でいられない、加速するAI活用」

早速ですが、日本企業でDXを推進している企業は全体の36.5%に留まっており、産業別・企業規模別では日本社会を支える重要な産業や中小企業で特にDXの遅れが目立っています。また、日本は社内にIT人材を抱えずにソフトウェア開発はIT企業に任せている割合が大きいです。そのため組織の内部からDXを起こすための十分な知識や経験がなく、DX推進が遅れているという現状があります。

NVIDIA AI DAYS 2022「もはや傍観者でいられない、加速するAI活用」

実は、AI導入やDX推進が盛んなアメリカでも国の支援としては日本と同様の状況だと言われています。しかし、アメリカでは日本と異なり、ビッグテックがAIに巨額の投資をしており活用を進めています。2021年にアップルは『今後5年間をかけて「人工知能、機械学習分野」を中心に約46兆円の投資をする』と発表しており、Microsoftは2019年に『Open AIに約11兆円の投資をする』と発表しています。一方、日本ではICTへの投資額が伸び悩んでおり、それに伴いソフトウェア活用も諸外国に比べて遅れをとっている状況です。

逆転の3つのポイント

ビッグテックの資金額は莫大であり同じように資金を集めることは困難です。そのため、日本企業は新しい技術に関する情報をキャッチして実装する「フォロワー戦略(※)」をとるべきです。

※フォロワーとは:リーダー企業に挑戦することはせず、市場で生き残れるだけの最低限の利益獲得を目指す企業。リーダーやチャレンジャーに追従して製品やサービスを販売することから「フォロワー」と呼ばれる。

NVIDIA AI DAYS 2022「もはや傍観者でいられない、加速するAI活用」

①実践で逆転

まず1つ目のポイントは試行錯誤を増やし、研究から逆転ではなく、実践で逆転するということです。

ディープラーニングは実際にやってみないとわからないことがたくさんあるため、試行錯誤を増やし、現場で通用するノウハウを積み重ねてはじめて新たなイノベーションやサービスが生まれてきます。そのため、IT企業にAI導入を任せるのではなく、社内のビジネスパーソンがAI・DXを使いこなせるようになる必要があります。

②人材育成とスタートアップで逆転

2つ目のポイントは、実践型の人材育成からスタートアップに繋げることです。

従来の教育は「教員が教えられるものを教える」という構造になりやすく、教育から起業や実際の社会での活躍に繋がりにくいです。教員が教えるだけではなく、「若い人が若い人に教える」ということが重要になってきます。実践的な人材育成により、AIを武器に高専から起業へ導く教育が必要とされています。

③融合領域で逆転

3つ目のポイントは、AI単独技術のビジネスではなく、物理化学やロボット、脳科学などの日本が強い研究領域と融合させることです。

研究には時間を要する場合も多いため、長期投資と短期投資のメリハリをつけて投資金額や期間を見極める必要があります。AI単独ではなく、別の領域と融合させることで新たなイノベーションに繋がります

DXとは:企業活動のサイクルを早めること

NVIDIA AI DAYS 2022「もはや傍観者でいられない、加速するAI活用」

企業価値を高めるためには、複利(※)を得ることが重要です。

※複利とは:元本の利子にさらに利子がつくことと。対義語は単利。

従来型の事業は、生産・流通・販売等の1年単位のサイクルが社会全体で決まっていましたが、デジタル化の過程で現場の状況や顧客情報を毎週 / 毎日 / 数時間単位でアップデートできるようになったりと、企業活動のサイクルを極端に早くできるようになりました。それはすなわち、1年単位ではなく、より短い単位で複利効果を得ることが可能だということです。

複利効果を得た企業の例としてFacebook(現Meta)があります。Facebookではサービスをリリースし、ユーザーの反応を見て改善するというサイクルと高速で大量に回すことで、サービスの性能を高めユーザーに価値を提供し続けています。15年前、本社内で開発版のFacebookが使われており、当時すでにバーションは38万を超えていたとのことです。

NVIDIA AI DAYS 2022「もはや傍観者でいられない、加速するAI活用」

tを増やすため、すなわちサイクルを早めるためには、人間や組織の動き方そのものを変化させる必要があります。特に組織の動き方は、従来のように慎重に検討して進めることよりも「まずやってみる」という部分が重要になってきます。デジタル化やAI導入は、やってみる前から明確な数値で効果を予測できるものではなく、仮説を立てて検証し、失敗を元に次の仮説を考えて再び検証するというサイクルを回していくことが必要です。

AIが実現するDXの可能性

NVIDIA AI DAYS 2022「もはや傍観者でいられない、加速するAI活用」

DXには様々な方法がありますが、中でもAI・ディープラーニングは扱えるデータの量が増えることなどからDXの牽引役として注目されています。特に画像認識や空間認識、自然言語処理などの分野でのAIの発展は目覚ましく、人間以上の精度や効率で業務を処理することも可能です。

NVIDIA AI DAYS 2022「もはや傍観者でいられない、加速するAI活用」

DXを通じた生産性の向上が企業価値に与える影響は大きく、産業平均とDX企業平均を比較すると、上記の図にもあるように一人当たりの生産性には大きな差があります。

まとめ

日本の産業の成長に避けては通れないDX。早急に人材を育成して個人の意識を変えるとともに、企業全体、社会全体で変革を目指していく必要がありそうですね。

また、弊社でも松尾氏の講演には非常に共感しており、実際に組織を内部から改革するためのAI研修や、学生エンジニアによるPoC開発を行っています。こちらも合わせてご確認いただければ幸いです。

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